クーポンは配布して終わりではありません。クーポン回収率は、効果を正確に分析できていないとクーポン施策が失敗に終わる可能性が高くなります。しかし、失敗しないためには、どのように分析をすればよいのか、分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、クーポン回収率の分析が正確にできていないことで、失敗してしまうケースや失敗を回避するポイントについて解説します。
1.クーポンは正しく分析しないと無駄に終わる
クーポンは配布をして終わりではなく、クーポン回収率を正しく分析しないと無駄に終わってしまうことがあります。クーポン施策は、結果を正しく分析したうえで、改善点を洗い出し、次の施策に生かすことで販促効果を高めることができるからです。
クーポンの回収枚数だけで判断していまい、適切に分析ができていないケースもありがちです。クーポンの分析は回収率、1枚あたりの売上、獲得単価、費用対効果などを正確に算出しましょう。以下では、クーポン効果測定の基本的な計算方法について紹介します。
▼クーポン効果測定の計算方法
回収率は、クーポンの反響を示す指標で、回収枚数÷配布枚数の式で計算ができます。例えば、チラシ10,000部を配布して、20枚のクーポンが回収できた場合、回収率は0.2%となります。回収率が高いほど、反響が高いと分析できます。
獲得単価は、クーポンを1枚回収するのに要した費用のことで、広告費用÷回収枚数の式で計算ができます。例えば、チラシ10,000部の印刷代、配布代の広告費用が60,000円で、20枚のクーポンが回収できた場合、獲得単価は3,000円となります広告費用を抑えつつ、回数枚数を増やすことを目指し、できるだけ獲得単価を下げましょう。
費用対効果は、広告費用に対して売上がいくら上がったのかを示す指標で、クーポンからの売上÷広告費用の式で計算ができます。例えば、クーポンからの売上が100,000円で、チラシ10,000部の印刷代、配布費用の広告費用が60,000円の場合、費用対効果は167%となります。費用対効果が高いほど、費用の回収率が高いと分析できます。
2.クーポン回収率の分析でよくある失敗例
クーポン回収の分析が正確にできていないと、クーポン施策が失敗に終わる可能性が高くなります。ここでは、正確に分析できていないせいで施策が失敗するケースとその理由について解説します。
(1)クーポン分の経費が無駄になる
(2)利益率を下げる結果となった
(3)新規獲得に繋がらなかった
(1)クーポン分の経費が無駄になる
1つ目のよくある失敗は、クーポン回収が正確に分析できず、次の施策のための材料が得られないため、クーポン分の経費が無駄になってしまうケースです。
クーポンを利用したのが新規客なのか既存客なのか、クーポンの利用で得られた売上がどれだけあったのかなど分からないと、次にどのようなクーポン施策を打つことで効果を高められるのか判断できません。売上増大につながっていると勘違いしたまま、無駄なクーポンを打ち続けてしまう可能性もあります。
クーポンの回収分析で、本来なら打てた次の施策と測定に失敗したことによる誤った施策について以下のケースを見てみましょう。
▼正確な測定ができたケースとできていないケースの施策一例の比較
【ケースA】
クーポンの目的:新規顧客の獲得20件
クーポン施策の結果:回収枚数30枚
クーポンの分析:新規客のクーポン利用数を把握
- 分析結果を次の施策に生かせたケース
新規の利用が10件の結果のため、次の施策として配布する地域を変えることにした
- 分析結果を次の施策に生かせていないケース
新規客の利用数が分からないため、次回も同じ施策を打った
ケースAは、新規客の利用が10件と目標を下回っていたが、クーポン利用枚数30枚の中で新規客数が分析できていないため、適確な判断ができずに次も同じ施策を打ったケースです。
また、そもそも目標設定がされていない、レジの定員が捨ててしまった、有効期限が設定されていない、などのクーポン施策の運用上のミスにより正確にクーポンの測定ができていないケースもあります。
(2)利益率を下げる結果となった
2つ目のよくある失敗は、クーポンの回収枚数は増えたが、利益率を下げてしまったケースです。分析対象をクーポンの回収枚数に絞ってしまう場合に起こりがちです。次回の施策では、回収枚数を増やすことだけに注力し、誤った改善策をとってしまいます。
以下は、飲食店Bが、10,000部のポスティング施策をした際のクーポン回収枚数を分析した一例です。
▼飲食店Bのクーポン回収枚数
配布回数 | クーポン施策 | 回収枚数 | 売上 | 粗利 | 粗利率 |
1回目 | 飲食代5%OFF | 25枚 | 71,250円 | 18,525円 | 26% |
2回目 | 飲食代10%OFF | 35枚 | 94,500円 | 19,845円 | 21% |
1回目のクーポン回収枚数は25枚でした。2回目に回収枚数を増やすために割引率を高めに設定したところ、回収枚数は35枚となったが、粗利率は21%と下げることになり、結果的に粗利はほとんど変わりませんでした。
(3)新規獲得につながらなかった
3つ目のよくある失敗は、新規客の獲得が目的でクーポンを配布した際に、回収率は高くなったが、新規獲得につながらなかったケースです。こちらはクーポンの回収率を高めることだけに注力した施策を打ち続けたことが原因となりがちです。
以下は、美容室Aが、10,000部のポスティング施策をした際のクーポン回収率を分析した一例です。
▼美容室Aのクーポン回収率
配布回数 | 回収枚数 | 回収率 | 新規獲得数 |
1回目 | 10枚 | 0.10% | 2件 |
2回目 | 12枚 | 0.12% | 1件 |
3回目 | 15枚 | 0.15% | 0件 |
1回目のクーポン回数枚数は10枚、新規獲得数は2件でした。2回目、3回目ともに回収枚数を増やすことのみに注力する対策をとった(過去の回収率が高かった地域に繰り返し配布をした)ために、本来の目的としていていた新規客の獲得にはつながりませんでした。
3.クーポン回収率の分析の失敗を回避するポイント
クーポン回収の分析を正確にできていないと、次の施策に生かすことができません。ここでは、クーポン回収の分析を失敗しないために押さえておきたいポイントを5つ紹介します。
(1)測定するためのルールづくりをする(2)費用対効果を正確に分析する
(3)期待効果売上を分析する
(4)クリエイティブ、媒体の比較分析をする
(5)ターゲット、配布エリアの比較分析をする
(1)測定するためのルールづくりをする
クーポンの効果を最大化させるためには、クーポン施策や分析についてのルールを事前に取り決めて準備しておくことです。クーポン施策や分析について、共通で理解しておくと、運用上のミスや分析のためのデータ漏れを減らすことができます。
以下は、クーポン測定のルールづくりの際のチェック項目一例を記載します。
▼クーポン測定のルールづくりのチェックシート一例
【クーポン施策について】
□クーポンのターゲットや目的を明確にしたか?
□クーポン回収の目標を立てているか?
□クーポンの特典や利用条件、有効期限を決めたか?
□クーポンの配布方法、回収方法を決めたか?
【クーポン分析について】
□クーポンの利用枚数が分かるか?
□クーポンを使用した顧客の数が分かるか?(複数名での来店)
□新規顧客か既存顧客が利用したか分かるか?
□新規リピート率が分かるか?
□クーポンからの売上が分かるか?
□クーポン施策をしなかったケースの売上を把握したか?
□ABテストをする準備をしたか?
クーポン施策は分析とセットで考え、可能な範囲内で分析するための準備をしておくことで失敗回避につながります。クーポン施策の企画段階で、チェックシートを使ってチーム内で共有しておくことをおすすめします。
チェックシート一例のExcelデータは「クーポン測定のチェックシート」からダンロードできますので活用して。
クーポン効果を高めるための活用方法は、「目的に合わないクーポンはムダに終わる!失敗例や効果を上げるコツも」の記事で詳しく解説しています。
(2)費用対効果を正確に分析する
クーポン回収の分析では、費用対効果を正確に分析することで失敗回避につながります。クーポン1枚当たりの売上を正確に把握することで、費用対効果の精度を高められます。
以下は、クーポン1枚当たりの売上の計算式とその一例です。
▼クーポン1枚当たりの売上計算式と一例
クーポン1枚当たりの売上は、平均客単価×平均1組人数の式で計算できます。例えば、平均客単価1,600円の飲食店で、クーポン利用の平均1組人数が2.5人の場合、クーポン1枚当たりの売上は4,000円となります。そこで、クーポンが30枚回収できた場合、クーポンからの売上が120,000円となります。費用対効果を正確に分析したうえで、客単価を上げるための改善点を洗い出しして、次のクーポン施策に生かしましょう。
(3)期待効果売上を分析する
クーポン施策の目的が新規獲得の場合は、クーポンからの直接的な売上だけではなく、期待効果売上まで分析することで費用対効果の精度を高めることができます。期待効果売上は、リピーター客が1年で生み出す売上です。ここでは、クーポン経由でどれだけの人がリピーターになったのかを把握、分析します。
以下は、期待効果売上の計算方法とその一例です。
▼期待効果売上の計算式と一例
期待効果売上は、平均客単価×リピート人数×年間来店数の式で計算できます。新規獲得のためのクーポン施策は、新規顧客を獲得して、リピーターにつなげる役割があるため、期待効果売上で成果を判断するようにしましょう。
例えば、客単価8,000円の美容室で、クーポン施策により30人が年4回来訪するリピーターになった場合の期待効果売上は960,000円となります。次回のクーポン施策では、客単価やリピート人数を増やすための施策を打ち、期待効果売上を上げていきましょう。
また、クーポン施策は、1回の反応で広告費用が回収できることは稀な例であるため、長期的な視野でクーポン施策に取り組む必要があります。
(4)クリエイティブ、媒体の比較分析をする
クーポン施策では、クリエイティブ、媒体の効果を正確に分析することで、反響を高めることが期待できます。クリエイティブの種類や配布する媒体ごとにクーポンの反響を比較することで、効果を高めるための施策を検討しやすくなります。
以下では、一例としてクーポン内容の違うのチラシを10,000部、ポスティングと折込チラシにて配布した場合のクーポン回収率をまとめました。
▼クリエイティブ、媒体ごとのクーポン回収率一例
クリエイティブ種類 | 媒体 | 回収枚数 | 回収率 |
クリエイティブA | ポスティング | 20枚 | 0.2% |
折込チラシ | 15枚 | 0.15% | |
クリエイティブB | ポスティング | 30枚 | 0.3% |
折込チラシ | 20枚 | 0.2% |
クリエイティブで比較すると、クーポン回収率はクリアイティブBの方が高く、媒体で比較すると、ポスティングの方が高くなりました。結果として、クーポン施策は、クリエイティブBでポスティング配布することが、もっとも効果が高かったと判断できます。次回のクーポン施策時は、効果の高かったクリエイティブBのブラッシュアップを重ねて回収率を高めていきます。
(5)ターゲット、配布エリアの比較分析をする
クーポン施策では、ターゲット、配布エリアの効果を正確に分析することで、反響を高めることが期待できます。狙ったターゲットによって配布エリアごとにクーポンの反響を比較することで、次の効果的な施策を検討しやすくなります。
以下では、一例としてチラシ10,000部をターゲット30代女性と50代女性に、エリアを2パターンに配布した場合のクーポン回収率をまとめました。
▼ターゲット、媒体ごとのクーポン回収率一例
ターゲット | 配布エリア | 回収枚数 | 回収率 |
ターゲット30代女性 | 配布エリアA | 20枚 | 0.2% |
配布エリアB | 10枚 | 0.1% | |
ターゲット50代女性 | 配布エリアA | 15枚 | 0.15% |
配布エリアB | 20枚 | 0.2% |
ターゲットが30代女性の場合、回収率は配布エリアBよりAの方が高くなりましたが、50代の場合は、回収率は配布エリアAよりBの方が高くなる結果となりました。こちらは、配布エリアにターゲットが多く居住していたためと想定できます。次回のクーポン施策時に、ターゲットに合わせた最適なチラシの配布エリアを見直して回収率を高めていきます。
効果を高めるためのターゲット設定や配布エリアの設定は、ポスティング・オリコミ・プランナー(POP)サービスを使うことで簡単にプランニングできます。POPは「年齢層」「性別」「世帯年収」など、およそ250種類の属性を選択することができ、ポスティングの配布計画まで一括してWeb上でプランニングできます。
※POP(ポスティング・オリコミ・プランナー)トップページ(2023年8月25日)
4.まとめ
クーポンは正しく分析をしないと無駄に終わる可能性が高くなります。1回のクーポンで広告費用が回収できることは稀なため、クーポン施策は結果を正しく分析をしたのち、改善点を洗い出しして、次の施策に生かすことで費用対効果を高めていきましょう。