Web広告とチラシ広告を併用するクロスマーケティング 成功例や向いている業種も解説

Web広告とチラシ広告は対照的な特性を持っている分、「どちらが有効か」という観点で語られがちです。しかしながら、近年ではデジタル媒体と紙媒体、互いの弱点を互いの得意な部分で補うクロスマーケティングの手法を取る広告主も増えています。この記事ではWeb広告とチラシ広告を併用する手法を紹介し、その成功事例や、向いている業種、併用の際の注意点について解説します。

1.Web広告とチラシ広告はどちらが有効?

チラシとWeb広告を比較した場合、その効果は商材やターゲットなどによって大きく異なります。チラシとWeb広告の比較検討をしている、もしくはWeb広告には詳しいがあまりチラシをやったことはない、といった方向けに両者の比較、併用の可能性についてご紹介します。

一概にどちらが有効なのかは決められない

Web広告とチラシの媒体としての特性は大きく異なっており、媒体と商材・ターゲットの組み合わせによって広告効果は大きく変わるため、どちらが有効なのかは一概に決められません。媒体の特性を理解し、それぞれの事業に合った広告手法を選ぶまたは併用するのが良いです。

例えば、検索キーワードに沿って広告が表示されるリスティング広告は興味が顕在化されている方に向けた広告です。一方でチラシはターゲットに絞る方法はあるものの、ニーズが顕在化されていない方にも届きます。Web広告は若年層に触れる機会が多く、チラシ広告は中高年やシニアの方に触れる機会が多いです。

併用がおすすめである理由

Web広告とチラシ広告の特性は対照的と言える程に異なっている分、お互いの弱点を補う効果を発揮します。従って、どちらかの媒体の弱点を補うような活用の仕方をすると、広告キャンペーン全体として大きな効果を発揮することができ、どちらか片方を活用するより広告投資効果が高くなることがあります。こうした手法をクロスマーケティングと呼ぶこともあります。

▼Web広告の弱点をチラシ広告で補うケース

例えば、リスティング広告は顕在層に触れられる分、人気のキーワードの単価は高くなる傾向があります。しかし、自社独自のキーワードをリスティング広告で設定し、そのキーワードを指名検索してもらうようチラシで促せばリスティング広告の単価を下げられるでしょう。

また、Web広告は興味がある人に届きやすい分、リーチは限られ、効果が表れるのにも時間がかかります。チラシ広告も併用すれば素早くリーチ数を補うことができキャンペーンの効果を速めることができます。

▼チラシ広告の弱点をWeb広告で補うケース

チラシ広告はB4やA4といった一定サイズの紙の中に情報をまとめなくてはいけない分、掲載できる要素に限りがあります。しかし、チラシ広告内にQRコードなどを利用してHPに誘導すれば、動画等も活用してより詳しい説明をすることができます。

また、チラシ広告は通常一度しか読まれず、印象付けることができるタイミングが多くありません。例えばチラシ内にQRコードを置いてHPに誘導して、そのページにリターゲティング広告を設定すればキャンペーンの内容をバナー広告などで何度も触れてもらうことができ、よく覚えてもらえる可能性が高くなります。

Web広告とチラシ広告併用の成功事例

こうした特性をうまく活用し、折込チラシとWeb広告の併用で効果をあげた例があります。ホームセンターカインズと読売新聞社が共同で取り組んだキャンペーンの例です。この事例では近隣向けのリーチが多くとれるチラシと、製品の説明が詳しくできるWebの媒体特性を生かし、高級フライパンの広告を折込広告チラシとWebバナー並びにランディングページを使って近隣のファミリー層に露出しました。

関東のカインズ店舗のうち、商圏が類似する8店舗を選び、高級フライパンの広告宣伝と売上の調査を行いました。「折込広告だけを実施(折込)」「ネット広告だけを実施(Web)」「折込広告とネット広告両方を実施(折込+Web)」「広告を実施しない(無)」の4グループに分けて、高級フライパンの売れ行きを広告投下前後週を含めて各店舗のPOSデータで追跡したというものです。以下は、調査結果をまとめたグラフです。

*出典:リテールアドコンソーシアム2019年10月読売新聞社調査『小売業、通販業における広告効果測定調査』

(2021年5月23日閲覧)

結果としては、ネット広告だけの活用の場合売り上げがあまり変わらなかったものの、通常ネット広告と折込広告を併用した店舗の売上が通常の約3.5倍、折込広告だけを実施した店舗でも2.3倍と明らかに広告の販促効果が強く表れたということでした。

 

Web広告とチラシの併用が向いている業種

ここからは、Web広告とチラシの併用が向いている業種例を具体的に挙げた上で、どういった手法がうまくいっているのか、どういった形でそれぞれの弱点を補っているのかを説明します。

1)ホームセンター等物販・小売等|商圏が広い実店舗がある業種

商圏が広い実店舗がある業種は、Web広告とチラシの併用が向いています。上記で挙げたホームセンターの例はこのケースに該当します。

チラシの中でも、よく目にする商品とお得な価格が羅列されているタイプは、セール情報を知ってもらって来店動機を作る効果が見込めます。しかし、こういったチラシ広告は一度しか見られないことが多く、それぞれの商品について詳しく情報を載せるのが難しいです。

一方、Web広告のバナー広告だけを配信しても無視されることが多いです。チラシ広告からランディングページに誘導するような流れを作る、、といったキャンペーンを行うと、チラシ広告で一度目にしてもらいバナー広告で繰り返しリマインドするような流れを作ることができます。また一押しの商品についてランディングページで詳しく説明することで、商品の魅力を詳しく知ってもらい来店につなげられます。

2)自動車、不動産業界等|高額商材を取り扱う業種

高額商材を取り扱う自動車、不動産業界などは、Web広告とチラシ広告の併用が向いています。

一般的に、紙媒体はWebよりも信頼性が高く、高級感を演出しやすいので、高級商材ではチラシ広告やフリーペーパー広告がよく用いられています。また、不動産は立地商売であること、自動車はディーラー網が地域ごとにあることから、エリアマーケティングが重要で、実店舗や現地への来客を促すためにチラシ広告が選ばれています。高級商材のマーケティングではWeb広告だけだとHPなどデジタル上の導線にはつながるものの、実店舗や現地への来客数を稼ぐのは難しいという点もあります。

その一方で、チラシ広告は子育て層・若年層へのリーチが少なかったり、紙面のスペースに限りがあるので詳しい情報を伝えるのに制限があったりします。従って、チラシ広告では実店舗や現地への来客を促すためにイベントやセミナーの情報に寄せ、詳しい情報はWeb上に記載するという手法がとられます。もしくは、チラシ広告を定期的に行うようにして高級商材の購入を検討するときに信頼感と想起されやすい状態を作っておき、実際に検討するときにはWeb上で詳しい情報を探すような設計をすることがあります。このようにエリア内で複数媒体に触れる導線を作っておくことが高額商材のマーケティングにおいては重要になります。

3)求人・飲食店・美容室・習い事等|ポータルサイトの影響力が強い、業界内競争が激しい業種

ポータルサイトの影響力が強い、同一エリアでの業界内競争が激しい、といった業種はWeb広告とチラシの併用が向いています。

このような業界では検索サイトから自社のページに直接誘導するのが難しいです。例えば、 “新宿区 美容室”と検索するとポータルサイトが上位に出てきます。“静岡 高校生 塾”で検索するといわゆるランキング系のサイトや大手のサイトが上に出てきます。自社ページの訪問数を増やすためには、ポータルサイト内で上位を取る、検索で上位表示されるようにそれなりの費用かコンテンツ作成の努力が必要です。

一方で、チラシ広告は、サイトを通さずに知ってもらうことができる媒体です。また、「xxで検索」のような指名検索のキーワードを覚えてもらうようなチラシを作れば、「美容室を利用したいなあ」とお客様が思ったときに指名検索をしてもらえるかもしれません。もしくはランキングサイトなどで見たときに「そういえばチラシでも見たお店だった」と思い出してもらえるかもしれません。

4)美容・健康食品、クリーニング等|サブスクリプション系の事業・継続利用を促す業種

定期的に宅配をして継続利用してもらうサブスクリプション系の事業も、Web広告とチラシの併用が向いています。こうした事業の需要は感染症状況下での「おうち需要」の拡大に伴い伸びていっています。しかしながら各サービスはニッチジャンルだったり、まだ世の中では新しいサービスだったりすることが多く、検索カテゴリーとしてそれほど強くなかったり直接検索されることが少なかったりします。その上に、検索された場合でもランキングサイトなどが上に来やすく検索上位を取るのが難しかったりします。チラシと併用でプロモーションを行うと、新しい分野のサービスでもリーチを取りやすく、指名検索での検索につなげることができます。それだけでなく、チラシ広告はポストに届くものが多いので宅配の消費行動に沿っていますし、家に帰るタイミングで目に触れる機会が多いのでサブスクリプション系のサービスに関する情報を受け入れやすいタイミングで情報が届けられます。

 

3.Web広告とチラシを併用するときの注意点

最後に、Web広告とチラシ広告を併用するときにあたっての注意点をまとめます。クロスマーケティングを行う時にはどちらか片方だけでは起きないような課題点が見つかることがあります。以下のような点には特に注意しましょう。

1)Web広告・チラシ広告両方に最新情報を掲載する

Web・チラシの両方を使って広告を行う時は、両媒体で掲載されている情報がずれないように注意してください。チラシで載っている情報のほうがHPで載っている情報より新しく、HPの更新が追い付いていないために「チラシに載っていることが間違っているんじゃないか」というクレームにつながることがよくあります。例えば、飲食店の営業時間が22:00までとHPで記載されていて、チラシでは20:00までと記載されていた場合、チラシからHPを調べた人が「どちらの営業時間が正しいのか」と問い合わせを入れることがよくあるようです。

2)キービジュアルやロゴなどの世界観をそろえる

キービジュアルやロゴなどの世界観がそろっていないためにHP上でユーザーが迷子になってしまうことがあります。例えば、チラシで使われているキービジュアルとランディングページで使われているキービジュアルが違うと、ユーザーが関係のないページに誘導されていと考えて離脱してしまう確率が高くなります。

逆に、Web側で広告を見ていたユーザーがチラシ広告で同じキャンペーンの広告を見かけてもキービジュアルがそろっていなければ同じキャンペーンの広告であるということに気が付かないかもしれません。キャンペーンを組み立てるときには全体によく目を配りましょう。

3)配布前にWeb側の公開チェックを念入りに行う

チラシに掲載したQRコードのURLが間違っていないか、パスワードをかけてしまっていないか、SSL化が正しく行われているか・・などのチェックをしっかり行ってください。当社が支援させていただいた事例でも意外に当日になって上記のようなミスが発覚することがあります。当たり前ですがチラシ広告は配布してしまった後の修正が不可能です。普段の公開日より念入りなチェックを行ってください。

4.まとめ

この記事では、Web広告とチラシ広告の互いの弱点を互いの長所で補うクロスマーケティングの手法と、それが向いている業種や注意点について説明しました。Web広告の手法について紹介した記事は多いですが、Web広告とチラシ広告両方を活かす手法について紹介している記事はまだ少ないように思えます。このクロスマーケティングともいわれる手法をあなたの事業でも活用して、ぜひ他と差をつけられる広告手法を手に入れてください。

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